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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)3596号 決定 1957年4月17日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人海野普吉、同西田公一の上告趣意は審理不尽、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。

この決定は裁判官小谷勝重、同河村大助の後記少数意見があるほか裁判官の一致した意見である。

裁判官小谷勝重、同河村大助の少数意見は次のとおりである。

原判決は、第一審が本件被告人に対して云渡した懲役一年、未決三〇日算入、四年間執行猶予の判決を破棄自判し、懲役一年、原審未決三〇日算入の実刑の云渡をしたのであるが記録によれば、その手続は書面上の調査のみによったのであって、事実の取調を行った形跡がない。このように第一審の執行猶予を附した判決を第二審において破棄し自判によってこれを実刑に改めるには自ら事実の取調を行うことを要し、さもなければ第一審に差し戻すべきものである。この点において原判決は違法なるを免れないから破棄すべきものである。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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